本郷美術骨董館 コラム

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【37億円】世界を驚かせたチキンカップ

中国語で言うと「明成化闘彩鶏缸杯」。

通称 「チキンカップ」。

高さ3.8cm 径8.3cm程のこの盃は、約500年前、皇帝御用酒杯として作られた。

この酒杯、最高品質のものだけ宮廷に入り、選抜されなかった品物は全て粉砕された。

明の皇帝、万暦帝は、御前に必ずこの酒杯一対を置いて楽しんだという。

15世紀に作られたこの酒杯が、2014年、サザビーズが、香港で開いたオークションで中国人実業家の劉益謙氏に2億8100万香港ドル(約37億円)で落札された。

中国古代磁器としてはオークションでの過去最高値を記録。

実業家・劉 益謙氏は、電話で落札。ハンマーが振り下ろされると満員の会場に拍手が沸き起こった。

劉益謙氏はアート業界では有名な人物だ。
タクシーの運転手から不動産投資家に転身、のちに建設業、製薬業などを興し巨大グループ企業へと発展させた立志伝中の実業家である。

またイタリアの画家モディリアーニの『裸婦像』を210億円で落札した人物としても有名だ。

さらに このチキンカップ37億円の支払いをAMEXブラックカードで払い、ポイントだけて2億円分 付与された話は余談としてアート業界で語り継がれている。

この酒杯、世界中記録に残っているのは、約19点しかない。其の内3点だけ個人収蔵品となっている。

他は、北京、台湾、ロンドン、ニューヨーク等の博物館に収蔵されている。

台湾の故宮博物館には、最も多く、6点を持ち、常時展示されている。

既存流通できる数が極めて少ない為、オークションに出される度に最高値記録を更新している。

闘彩(とうさい)、日本では、色絵付が青豆に似た瑞々しい淡緑色を主とした彩釉を使われている為、【豆彩】と呼ばれている。

中国では、その焼き方から、まず青花で細い線の輪郭を描き、透明釉を施し、1300度の高温で、形を作り、再び赤、緑、黄色を透明釉の上で添色し、低温焼成で完成品になる。完成品に釉上彩と釉下彩の諸色が鮮やかに表れ、まるで綺麗さを争うようになっていることから、【闘彩】と呼ばれている。

闘彩の技法は、明成化年代初期に誕生したが、その技術の要求がとても難しく、なかなか良いもの出来ない、「明成化闘彩鶏缸杯」は、最高傑作品とされている。

成化以降二百年間余り、明、清各年代の皇帝がその時代の官窯に命じて、模倣品を作らせたが、いくら出来が良くても、「明成化闘彩鶏缸杯」に使われていた原料の陶土は、成化年代で使い切り、同じ原料が無い為、二度と同じものができない。

焼き物を愛した清朝の乾隆帝が作った詩の中で、「寒芒秀采総称珍、就中鶏缸最為冠」という句があり、古来、宮廷の中でも、チキンカップが珍重されていることが分かる。

作られた経緯は、諸説があり、一説だと成化元年が干支の鶏年で、それに、中国語の発音が、「鶏」と「吉祥」の「吉」と似っているから。これは、一番有力な説だと言われている。

自宅にて過ごす時間が増えた昨今、チキンカップは無いと思うが 一度、押入れの中の探索されてみてはいかがでしょうか?

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